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日々の数学やプログラミングに関係する話。

数学

sin(x)/xの極限を矛盾なく証明してみる

お久しぶりです。書き残しておきたいネタができたので、書くことにしました。 さて、以下のような定理があります。 \begin{align}\lim_{x \to 0} \frac{\sin(x)}{x} = 1 \tag{1}\end{align} 数学において、最も有名な極限問題と言ってもいいと思います。読者…

調和級数が、収束する?

調和級数は、収束しないよ。(釣りタイトルじゃん) なんてこった……。 じゃあ、こういう級数を考えてみましょう。 とりあえず、調和級数*1と同じ級数を用意します。 \begin{align}1 + \frac{1}{2} + \frac{1}{3} + \frac{1}{4} + \frac{1}{5} + \frac{1}{6} …

導出: Riemannゼータ関数の特殊値のBernoulli数による表現

書いておきたい数学の話があったので、書きます。タイトルの通りです。 sin xの因数分解 今回の話は、以下の式から始まります。 \begin{align}\sin (\pi x) = \pi x \prod_{n=1}^{\infty} \left( 1 - \frac{x^2}{n^2} \right)\end{align} は任意の実数としま…

今から15回の反復計算で円周率を20億桁求めます

みなさん、お手元に無限の精度*1の電卓のご用意はできていますでしょうか。 2つ変数を用意します。 初期条件 以下の漸化式に従って、 を求めます。15回繰り返しましょう。 漸化式 そうしたらば、きっとあなたの手の中には20億個の見覚えのある数たちが列を成…

項別微分っていつできる?

自分用の備忘録も兼ねて、項別微分について書こうと思います。 ある関数列 について、 という関数を考えます。 この関数を微分したいと思ったとき、普通は(微分の線形性的に)項別に微分しようとしてしまうと思うのですが、実はこれができないケースが存在…

N以下の素数の逆数和の発散速度がlog log Nくらいなことのお気持ち

なんか適当に検索かけても出なかったのでお気持ちだけ書きます。(厳密な証明は英語Wikipediaあたりにあります) 以下、特に断りが無ければ は素数とします。 さて、以下のような事実が知られています。 \begin{align}\sum_{p} \frac{1}{p} = \infty\end{ali…

Cauchyの平均値の定理とTaylor展開

Cauchyの平均値の定理を用いてTaylorの定理を証明します。 Cauchyの平均値の定理 関数 は閉区間 ] 上で連続かつ開区間 上で微分可能であって、 かつ区間内の各点 において とする。このとき、 \begin{align}\frac{g(b) - g(a)}{h(b) - h(a)} = \frac{g'(c)}{…

微分方程式の美味しい炊き方、そして黄金比を食べることによるその効果。

お久しぶりです。今日は数学の話をします。 今回は、この微分方程式を解いていきたいと思います。 \begin{align}f'(x) = f^{-1}(x)\end{align} ある関数の導関数と逆関数が等しい、と言っています。 どうでしょう、ぱっとすぐに解が思いつきますか?一体どん…

円周率の近似値 ~ ゼータ関数の特殊値

寝る前にちょっとメモ書きです. であるから、 ここで、0909が繰り返されている部分に注目して、それより前の と合わせてそれぞれ分数化する. \begin{align}97.4 &= 97 + \frac{4}{10} \\\frac{9}{990} &= 0.0090909 \ldots\end{align} したがって、 \begin{a…

x^2 = 2^x ~ ランベルトのW関数と共に

お久しぶりです。久しぶりに数学の話でもしようかなと思います。 \begin{align}x^2 = 2^x \quad (x \in \mathbb{R})\end{align} 今回はこの方程式について、取り扱います。 突然ですがみなさん、この方程式解けますか? ……「甘く見てもらっちゃ困る、2と4だ…

数列クイズをしよう。(高校数学の話)

突然ですが、問題です。 \begin{align}1, 1, 2, 3, 5, 8, \ldots\end{align} この数列で、8の次の数はなんでしょう? 正解は…… 733 でした!!!!!!! \begin{align}a_n = \prod_{k=1}^6 (n - k) + \frac{1}{\sqrt{5}}\left\{\left(\frac{1+\sqrt{5}}{2}\…

ABC予想とFermatの最終定理

この記事は、「日曜数学 Advent Calendar 2019」13日目の記事です。 adventar.org 「数学の問題は、足し算と掛け算が絡むと途端に難解になる。」 日曜数学のアドベントカレンダーには参加しようと思ってみたものの、さて何を書こうかと思っていたのですが、…

ラマヌジャンの円周率公式を証明する #5

第五回です。お久しぶりです。 更新滞りすぎ感があったのでちょっとだけ書いておきます。 3. 等価(equivalent)な格子とKleinの絶対不変量 この章では、互いに回転・拡大縮小の関係にある等価(equivalent)な格子について取り扱う。等価な格子は、等しいKl…

ラマヌジャンの円周率公式を証明する #4

第四回。今回から第二章ですが、原論文では2ページしかないところなのでササッとやります。 mikan-alpha.hatenablog.com 注意:これまで のことを(基本)単位と書いてましたが、どうやら周期のほうが良さそうなので変更します。 2. 準周期(quasiperiods)…

ラマヌジャンの円周率公式を証明する #3

第三回です。ところどころ証明が分からなくなってきたのでサポートしてくれる人がほしい。 よく分かってない証明:極と零点に関わる証明(Liouvilleの定理2、3まわり)、命題1.20、1.21 あと今更ですが、この日本語訳計画が終わったら別でお気持ちが分かるよ…

ラマヌジャンの円周率公式を証明する #2

昨日の続きです。以下常体になります。 mikan-alpha.hatenablog.com 1. 楕円関数(Elliptic Functions) この章では、Weierstraßの楕円関数についての用語と命題を取り扱う。 定義 1.1. 上線形独立な複素数の組 について、 \begin{align}L = \mathbb{Z} \ome…

ラマヌジャンの円周率公式を証明する #1

※この記事は以下のものの続き的なものではありますが、読んでも読まなくても大丈夫です。 mikan-alpha.hatenablog.com mikan-alpha.hatenablog.com mikan-alpha.hatenablog.com 上の記事を書いてから、もうだいぶ経ってしまいました。 個人的にまたこの話題…

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タイトルにある分数の話です。 手元に紙とペンがあって暇な方は自分で割り算してみてください。 こんな風になりましたか? 「これが何なんだ」って人は、もう少し先まで計算してみてください。120桁くらいやれば、流石に見えてくると思います。 フィボナッチ…

電車が事故らないように一瞬でブレーキをかけたい!!

突然ですが、電車をピタッと止めたくなってきました!ほら、電車ってブレーキかけても一瞬で止まってくれないじゃないですか。あれじゃあ不便ですよね。マスコミは一体何を求めているのか もっと、ピタッと止まってくれれば衝突事故とか減るんじゃない!?(…

円周率公式のまとめ

今日の話は円周率公式の話です。 円周率公式と一口に言っても、円周率に関わる公式はたくさんあります。その中でも今回は、コンピューターで円周率を計算する際に実際に使われている、あるいは使われていたものについて取り扱っていきたいと思います。 ただ…

エニグマ(初期版)をVC#で作ってみた

社会の情報化・電子化が進み、暗号化というものは不可欠な存在になってきました。 パスワードだとか、あるいはもっと重要な企業間、国家間の機密情報が平文のままやりとりされていては堪ったものではありません。 実際に利用されている暗号化の方式としてはR…

メモ: 最小公倍数とネイピア数の件のラフ証明(with素数定理)

素数定理参戦!!

ネイピア数 e と素数定理のヤバい関係

今日、思わぬ情報を目にしました。それがこいつです。 \begin{align}\lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{{\rm LCM}(1,2,\ldots,n)} = e\end{align} The limit as 𝑛 → ∞ of the 𝑛ᵗʰ root of the Least Common Multiple from 1,2,.. 𝑛 is equal to 𝑒 pic.twitter.co…

x^(dx) - 1

\begin{align}\int x^{dx} - 1 &= \int \frac{x^{dx} - 1}{dx} \, dx \\&= \int \log x \, dx \\&= x \log x - x + C\end{align} ( は積分定数)

関数の「強さ」の話

極限を習うと、関数の「増加の速さ」比べができるようになります。 何か2つ関数を持ってきて、その における比を調べてみればいいわけです。例えば、こんな二つ。 \begin{align}\lim_{x \to \infty} \frac{\log x}{x}\end{align} 一次関数と自然対数関数です…

-3個のりんごから7個選ぶのは何通り?

りんごが目の前に 個置いてありました。この中から 個選ぶことにしましょう。 \begin{align}\binom{-3}{7}\end{align} さて、いつもの通り計算すればいいので、 \begin{align}\binom{-3}{7} = \frac{(-3) \times (-4) \cdots (-8) \times (-9)}{7!}\end{alig…

二重階乗とネイピア数

今日はこれを計算したいと思います。 \begin{align}\sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{(2n)!!}\end{align} 分母のやつは二重階乗と呼ばれるやつです。階乗を二回繰り返したやつ とは違うので注意しましょう。 一応初めて見た方向けにざっくり説明すると、二重階…

負の数にも指数を乗っけてみようじゃないか

高校の数学Ⅱでは、指数関数と対数関数というものを習います。 \begin{align}y = a^x\end{align} こんな感じのやつですね。対数関数はこの関数の逆関数なのでした。 ただし条件があって、 は1ではない正の実数という仮定が必要です。もし が1だとしたら、そも…

メモ: Sternの2原子数列

先日の数学デーにて面白い話を聞けたので、忘れないうちにメモを残しておきます。 以下のように定義される数列 はSternの2原子数列(Diatomic Series)と呼ばれるものです。 \begin{align}s_0 &= 0 \\s_1 &= 1 \\s_{2n} &= s_n \\s_{2n+1} &= s_n + s_{n+1}\…

ラマヌジャンの円周率公式を理解したい 第三回 - 公式の一般形

ラマヌジャンの円周率公式、第三回です。 mikan-alpha.hatenablog.com さて、前回は色々な道具を導入して限られた場合の円周率公式の生成法を紹介しましたが、今回はもう少し一般化した話をしていきたいと思います。 証明のようなものは、また別の機会に書け…