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日々の数学やプログラミングに関係する話。

積分に一意性ってあるの?


ある関数f(x)があって、その原始関数F(x)を求める。
これが積分、という演算です。

\begin{align}
\int f(x) dx = F(x) + C \\
F'(x) = f(x)
\end{align}

C積分定数とします。)
ここで、ふと疑問に思いました。「原始関数は(定数項の違いを除いて)一意に定まるのだろうか?」と。
数式として表すのならば、こうです。

予想. 任意の2つの関数F(x)G(x)に対して、以下が成り立つ。

\begin{align}
F'(x) = f(x) \land G'(x) = f(x) \Rightarrow F(x) - G(x) = C
\end{align}

簡単な多項式で表される関数を積分するならまだしも、複雑な関数になってくると「微分したらこれになる関数って他にもあるんじゃないか……?」とか思ってしまいます。
ならば証明してしまいましょう。原始関数の一意性。

証明

ある関数f(x)の原始関数を、F(x)G(x)と置く。
仮定より明らかに以下が成り立つ。

\begin{align}
F'(x) = f(x) \\
G'(x) = f(x)
\end{align}

ここで、以下のように関数\phiを定める。

\begin{align}
\phi (x) = F(x) - G(x)
\end{align}

微分線形性から、

\begin{align}
\phi '(x) = F'(x) - G'(x) = f(x) - f(x) = 0
\end{align}

したがって\phiは定数関数である。Q.E.D.
(Quite Easy Doneではない)

線形性

簡単な補足です。
線形性とは、ある演算の以下のような性質のことです。

\begin{align}
f(x+y) &= f(x) + f(y) \\
f(ax) &= af(x)
\end{align}

線型性 - Wikipedia

fと書くと関数だけの話みたいに見えてしまいますが、抽象的な演算も含まれます。
上の証明では、f微分演算子と見ています。

微分演算子Dと置けば、

\begin{align}
D(f+g) &= Df + Dg \\
D(af) &= aDf
\end{align}

となりますから、微分は明らかに線形性の条件を満たしています。