ラマヌジャンの円周率公式を証明する #1
※この記事は以下のものの続き的なものではありますが、読んでも読まなくても大丈夫です。
上の記事を書いてから、もうだいぶ経ってしまいました。
個人的にまたこの話題に触れる機会があり、ちょうどいいと思ったので、お気持ちではなく証明を書きたいと思います。ついにですね。
注意ですが、このシリーズ記事は以下の論文の日本語訳(+個人的な行間埋め)になります。
英語の数学用語等はもう読めるよ、という方は元の論文の方も参照するとより幸せになれると思います。
今回は初回ですので、いつも通りイントロダクションとします。
当然ながら内容はそこそこハードになるかと思いますので、自分のペースでゆっくりどうぞ。
イントロダクション
この節で扱うもの:「これから何を示すのか」、証明に使う関数たち
円周率を求めるための公式の1つとして、Chudnovskyの公式というものがあります。
\begin{align}
\frac{1}{\pi}=12 \cdot \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^{n}(6 n) !}{(3 n) !(n !)^{3}} \cdot \frac{13591409+545140134 n}{640320^{3 n+3 / 2}}
\end{align}
この公式は1項計算を進めるごとに10進数でおよそ14桁ずつ円周率の正確な値を求めていくことができます。
このおよそ14という数字は、総和の中身の部分を とでもおいて を計算すれば出てきます。
このシリーズの目標は、この公式、加えてより一般化されたものを証明することです。
証明に最低限必要なものは、主に複素解析の知識です。ローラン級数や留数定理等を用いますが、余裕があればその都度解説を入れたいと思います。
証明の目標となる主定理の前に、それに必要な関数をいくつか定義しておきます。
まず、以前の記事でも登場した正規化アイゼンシュタイン級数(normalized Eisenstein series)です。
ここで、 で、 の虚部は正とします。
さらに、これらを用いて2つの新たな関数を定義します。
そして、これがこれから証明する主定理です。
Main Theorem.
ただし、平方根は主値を取るものとします。
冒頭で述べたChudnovskyの公式は、この等式の特別な場合です。
に を代入することにより得られます。
次回予告
「え、終わるのはやくね?」と思われそうですが今日は疲れたのでここまでにしておきます。
次回は、楕円関数を扱います。
格子やらワイエルシュトラスの 関数・ 関数・ 関数やらが登場しますので、tsujimotterさんのブログのこちらの記事がとても参考になるかと思います。
私も次回までに勉強しておきますので、引き続きよろしくお願いいたします。