調和級数が、収束する?
調和級数は、収束しないよ。(釣りタイトルじゃん)
なんてこった……。
じゃあ、こういう級数を考えてみましょう。
\begin{align}
1 + \frac{1}{2} + \frac{1}{3} + \frac{1}{4} + \frac{1}{5} + \frac{1}{6} + \frac{1}{7} + \frac{1}{8} + \frac{1}{9} + \frac{1}{10} + \cdots
\end{align}
ここから、分母の整数を10進法で表記したときに、いずれかの桁に"9"を含むものを除きます。
つまり、 などを除いて和をとります。
この無限和はどういった値になるでしょうか?
そもそも、収束性は?
自分で考えたいという方は、ここで少し立ち止まってみてください。
実はこの級数、収束します。
具体的な値は、おおよそ23程度になります。
直感的には、大きい桁数の整数ほどその中に"9"を含んでいる可能性が高いですから、その分和が小さくなっているというわけです。
また、これは"9"ではない他の数字(あるいは任意の桁数の整数)を除いても、同様に収束します!
この級数には、Kempner級数という名前がついています。Kempnerというのは、この級数について初めて研究をした数学者の名前です。
下に"9"を除く場合の数学的な証明を載せておきます。(Wikipediaより)
証明
分母の桁数ごとに和を分割する。
桁の正整数であって、"9"を含まないものは、 個存在する。
(先頭の桁のみ"0"を選ぶことができない)
任意の 桁の正整数 に対して、 が明らかに成り立つ。よって、両辺の逆数をとることで を得る。
ここで、全ての についての和をとれば、分母が 桁の正整数であって"9"を含まないものについての和は、 で上から抑えられる。
したがって、Kempner級数の和は高々 である。
*1:すべての正整数の逆数和