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日々の数学やプログラミングに関係する話。

リーマン予想について少し考察してみたい(予想解説編)

リーマン予想に関して少し話をしてみたくなったのですが、初めて取り扱うということでせっかくですし基本的なことからメモをしていきたいと思います。

そもそもリーマン予想って?

リーマン予想 - Wikipedia

リーマン予想という名前だけは聞いたことがある、っていう方も多いかと思います。

リーマン予想とは、以下のように定義されるリーマンゼータ関数についての予想です。

\begin{align}
\zeta ( s ) = \sum _ { n = 1 } ^ { \infty } \frac { 1 } { n ^ { s } } = 1 + \frac { 1 } { 2 ^ { s } } + \frac { 1 } { 3 ^ { s } } + \frac { 1 } { 4 ^ { s } } + \cdots
\end{align}

上のように、全ての自然数s乗したものの逆数を足していくことを考えます。ここでs複素数の変数で、sの実部が1より大きいときこの無限和が有限の値に収束することが知られています。(sを実数と制限したときの証明程度なら高校生でもできるくらいのものです)

この時点では、例えばs=1/4としたりすることはできず意味のある値を持つ範囲、つまりこの関数の定義域は複素数平面においてs=1の右側(ただし境界は含まない)となります。

このリーマンゼータ関数は、整数について考える分野によく登場します。そして特に素数との結びつきが強く、そのため大きな研究対象となっています。

この関数が素数と強く関係している所以として、以下のような表示を持つことがあります。この式の右辺はオイラーと呼ばれます。

\begin{align}
\zeta (s) = \prod_{p} \frac { 1 } { 1 - p ^ { - s } } = \left(\frac { 1 } { 1 - 2 ^ { - s } }\right) \left(\frac { 1 } { 1 - 3 ^ { - s } }\right) \left(\frac { 1 } { 1 - 5 ^ { - s } }\right) \cdots
\end{align}

p は全ての素数を渡り、右辺の積は計算するとちゃんと定義式の自然数の逆数和になります。(右辺は全ての自然数素因数分解を網羅しているからです)

ちなみに余談もいいところですが、このオイラー積とかをガチャガチャ弄ってやると全ての素数の積が 4 \pi ^2 となることが分かります。

 

さて、今リーマンゼータ関数素数との関係が強いということを話しました。元の定義式とオイラー積表示の2つを行き来することで、自然数の問題を素数へ、素数の問題を自然数へ移すことができるのです。まさに、自然数素数を司る関数と言えましょう。そして、これから話すリーマン予想はこの素数、特に素数の分布についての予想なのです。

 

そろそろリーマン予想本体へ入りたいところですが、まだ問題があります。それは、リーマンゼータ関数の定義域の問題です。

上でも書いたとおり、このリーマンゼータ関数というのは今のところ実部が1より大きい複素数に対してしか定義されていません。どうせなら、複素数平面全体まで定義域を広げたくなります。ということで、リーマンゼータ関数の定義域を今から広げます。

ここで使う道具が、解析接続というものなのですが、いかんせんとても高等な道具で端的に話せるようなものではありません*1。なので、定義域を広げたらこうなるんだな程度に流してください。

リーマンゼータ関数 \zeta (s) の定義域をs=1を除く複素数平面全体まで拡張した新しいリーマンゼータ関数 \tilde{\zeta} (s) は、このようになります。

\begin{align}
\tilde{\zeta} (s) = \frac{\Gamma (1 - s)}{2 \pi i} \oint_\gamma \frac{u ^ {s - 1}}{e ^ {-u} - 1} \, du
\end{align}

積分\gamma は負の無限大から平面の原点を回ってまた負の無限大に戻るような感じになりますが、今回は詳細はカットします。

もとの \zeta (s) の定義域内ではちゃんと同じふるまいをしてくれるので、\tilde{\zeta} (s) はしっかりリーマンゼータ関数の拡張になっていることが分かります。

 

では、そろそろようやく本題に入れそうです。
リーマンゼータ関数の定義域を拡張したことで、新しく問題提起をすることができます。

それは、\tilde{\zeta} (s) = 0 となるような複素数 s についてです。

例えば、s が負の偶数のとき \tilde{\zeta} (s) = 0 となることが知られていて、s = -2, -4, -6, \cdots自明な零点と言われています。

ですが、\tilde{\zeta} (s) = 0 となるような複素数 s は負の偶数以外にも存在して、それらには非自明な零点と呼ばれます。

そして、リーマン予想はまさにこの非自明な零点の分布に関する予想なのです。

予想の主張はこうです。

リーマン予想(RH).

複素数 s\tilde{\zeta} (s) = 0 を満たしかつ負の偶数でないならば、\Re s = 1/2 であろう。

簡単に言えば、非自明な零点は全て s=1/2 という直線の上に乗っかっているという主張です。これまでに完全な証明も反証もされておらず、数学上の未解決問題と一つとなっています。

この予想がどう素数に関係しているかを話すのにはまた長いスペースが必要になってしまうので、ここまでにしておきます。

あとがき

最初はこんながっつり解説する予定もなく、しかも記事を分けるなんてさらに予想してませんでした……。
次回タイトルにある考察を殴り書きしていきたいと思います。

興味のある人向け 

tsujimotter.hatenablog.com

*1:興味があれば調べてみてください