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日々の数学やプログラミングに関係する話。

メモ: 最小公倍数とネイピア数の件のラフ証明(with素数定理)

mikan-alpha.hatenablog.com

 

前回こんなような記事を書きましたが、例によって数学デーにてラフな証明の話を聞けたのでその分と自分での補完でざっくり証明(説明)をしたいと思います。

全く数学的には厳密ではない話を含みますので、「確かに納得はできるな」「なるほど成り立ってそうだな」くらいのノリで読んでいただけると助かります。

数学デーの皆様の知見に感謝です。

証明のアウトライン

前回の記事にリンクを載せた証明では最小公倍数の式のみを全うに変形して証明を行っていましたが、ここでははさみうちの原理を用います。
素数定理といくつかの補題を認めてしまうことによって、意外と容易に説明をつけることができます。

まずベースとして使うのが、以下の不等式です。

\begin{align}
\sqrt[n]{p(n)} \leq \sqrt[n]{{\rm lcm}(1,2,\ldots,n)} \leq \sqrt[n]{n^{\pi(n)}}
\end{align}

ここで p(n) は、n#(素数階乗)です(なぜかTeXで#を打てなかったので代替させていただきます)。
\pi(n)素数計数関数ですが、こちらは有名ですので大丈夫でしょう。

\begin{align}
p(n) = \prod_{i = 1}^{\pi(n)} p_{i}
\end{align}

p_i はi番目の素数

真ん中に、前回話題に上げたやつがあります。
したがって、n \to \infty において左の式と右の式が e に収束することが示せればいいわけです。

というわけで、不等式の左側と右側を別に証明していくことにします。

Part 1. 不等式の左側(素数階乗)

ここで示したいことは、こうです。

\begin{align}
\lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{p(n)} = e
\end{align}

これを示すために、(第一種)Chebyshev関数というのを導入します。
実はこれは、素数階乗 n# の自然対数となっています。

\begin{align}
\vartheta(x) = \sum_{p \leq x} \log p
\end{align}

上の定義式で、px 以下の全ての素数を渡ります。
右辺はlogの足し算になっているので、変形すると引数は x# そのものです。

そして逆にこの両辺を e に乗じると次を得ます。

\begin{align}
p(n) = e ^{\vartheta(n)}
\end{align}

示したい式の形に近づいてきました。次に両辺 1/n 乗すれば、

\begin{align}
p(n) ^{\frac{1}{n}} = e ^{\frac{\vartheta(n)}{n}}
\end{align}

両辺極限とって、

\begin{align}
\lim_{n \to \infty} p(n) ^{\frac{1}{n}} = \lim_{n \to \infty} e ^{\frac{\vartheta(n)}{n}}
\end{align}

ここで右辺の指数部に注目すると、素数定理そのものになっているので結局、

\begin{align}
\lim_{n \to \infty} p(n) ^{\frac{1}{n}} = \lim_{n \to \infty} e ^{\frac{\vartheta(n)}{n}} = e
\end{align}

となって、左側の式を示せました!

※注意(素数定理):
\begin{align}
\lim _{x \to \infty} \frac{\vartheta(x)}{x} = 1
\end{align}

Part 2. 不等式の右側(素数計数関数)

ここで示したいものは、これです。

\begin{align}
\lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{n^{\pi(n)}} = e
\end{align}

ここで指数部に乗っかっている素数計数関数は、素数定理から n \to \infty において n / \log n との比が1に収束することが分かっていますので、これを利用して以下のように置換します。

\begin{align}
\sqrt[n]{n^{\pi(n)}} \sim \sqrt[n]{n^{\frac{n}{\log n}}}
\end{align}

あとは右辺を変形していきましょう。n乗根は1/n乗ですから、

\begin{align}
\sqrt[n]{n^{\frac{n}{\log n}}} = n^{\frac{1}{\log n}}
\end{align}

こうなりますね。logの逆数は底の変換公式から底と真数をひっくり返せばよいので、

\begin{align}
n^{\frac{1}{\log n}} = n^{\log_n e} = e
\end{align}

したがって、右側も示すことができました!

参考文献等