0.7390...の謎が解決できた話(前編)
前回の記事を書いた後、どうにかして数学的な証明を与えられないものかと探っていたときのことです。
とりあえず、WolframAlphaに頼ってみることにしてみました。
Wolfram|Alpha: Computational Intelligence
検索ボックスに「」と入力すると……
ん? なにやらすごく求めているものに近い値があります。
最初見たときに、「って何……」ってなったんですが、ちゃんと右下に書いてありますね。どうやら、ドッティ数というものがあるらしい。
調べてみると、幸運なことにWikipediaがありました。
The Dottie number is a mathematical constant that is the unique real root of the equation .
説明を読んでみると、まさに求めていたものです。既に という方程式の解には名前が付けられていました。
そして、さらに大きな収穫があります。
The Dottie number can be expressed as the infinite sum where each is a rational number.
前回できなかった、数式による表示が実現できそうな予感!!
ところがここで問題が。
数列を具体的にどう構成すればいいのか書いてない……。
再び行き詰まりかけたとき、検索をかけてみるとなんと別の解説サイトがヒット。
見てみると、すごい詳しく書いてあります。やばい。めちゃくちゃ助かる。
ということで、今回は(とても長いので)前後編に分けてこのサイト様の情報をもとに前回できなかった数学的な証明を行っていきたいと思います。
という方程式を解くことに帰着させるまでの流れは前回のもので問題ないと思うので、そこ以降の話です。
(実際に方程式を解くというより、方程式を満たすという性質を利用して解となる新しい数を構成します)
The Dottie Number(ドッティ数)
(以降、ドッティ数を と表記します。)
まず、ドッティ数の定義です。
定義.
定義よりは明らかにを満たします。
ちなみに前回言葉としては登場しませんでしたが、一般にある関数に対してを満たすようなをの不動点といいます。
今回、この不動点という概念をよく持ち出すことになります。
まずこのドッティ数について話していくにあたって紹介したいことがあります。
それは、この定数は超越数であるということです。
そう、なんとこのドッティ数、超越数なんですよ。これだけで既に深い。
最初にその性質の証明からしたいと思います。
以下で使われる記号:
: 代数的数の集合
: ネイピア数
: 虚数単位()
ドッティ数が超越数であることの証明
一般になんらかの数が超越数であることの証明ってかなり難しいのですが、この定数に関してはそれほど難解なものではありません。その代わりに、いくつかの補題が必要になります。
補題1. Lindemann–Weierstrassの定理(LWT)
ここで、特別な場合として以下を導くことができます。
補題2.
\begin{align}
\sin \mathrm{d} = \sqrt{ 1 - \mathrm{d} ^ 2 }
\end{align}
証明.
\begin{align}
\sin \mathrm{d} ^ 2 + \cos \mathrm{d} ^ 2 &= 1 \\
\sin \mathrm{d} ^ 2 + \mathrm{d} ^ 2 &= 1 \\
\sin \mathrm{d} &= \sqrt{ 1 - \mathrm{d} ^ 2 }
\end{align}
この3つの補題を利用していきます。
証明.
が代数的数であると仮定する。
オイラーの公式より、
\begin{align}
e ^ {i \mathrm{d}} &= \cos \mathrm{d} + i \sin \mathrm{d} \\
&= \mathrm{d} + i \sin \mathrm{d} \\
&= \mathrm{d} + i \sqrt{ 1 - \mathrm{d} ^ 2 }
\end{align}
また仮定より、 は代数的数である。
しかし、LWTによれば であり、矛盾。
とても短くかつ簡潔ですね。このあとの本題の方には関係無いのですが、個人的にとても紹介したかった性質です。
次回予告
はじめは前後編分けずに1つの記事にしようかと思っていたのですが、いかんせん私自身がかなり疲れてしまったので急遽分けることにしました。後編の証明を書く準備自体はできているので、空き時間ができ次第書こうと思います。(そこそこヘビーな証明です)
キーワードは、テイラー級数です!
では、また次回お会いしましょう。