Holograph1c Attract0r

日々の数学やプログラミングに関係する話。

関数の「強さ」の話

極限を習うと、関数の「増加の速さ」比べができるようになります。

何か2つ関数を持ってきて、その x \to \infty における比を調べてみればいいわけです。
例えば、こんな二つ。

\begin{align}
\lim_{x \to \infty} \frac{\log x}{x}
\end{align}

一次関数自然対数関数です。この比が1に収束するならこの二つは同じくらいの増加速度だ、と言えるし、同様になんらかの0ではない実数の定数に収束するならば比例関係にあるといえるでしょう。また他にも、正の無限大に発散するならば一次関数よりも対数関数の方が強くて、逆に0に収束すれば一次関数の方が強いとなります。

今回は、こんな風に関数の力比べをしてみることにします。

対数関数とn次関数

まずは上の例をもう少し一般化して手慣らしでやってみましょう。

\begin{align}
\lim_{x \to \infty} \frac{\log x}{x^n}
\end{align}

n自然数の定数です。

正の実数の範囲では分母、分子ともに微分可能関数で、x \to \infty において分母が0になるようなことも無いのでこの場合はロピタルの定理が有効です。

\begin{align}
\lim_{x \to \infty} \frac{\log x}{x^n} = \lim_{x \to \infty} \frac{\frac{d}{dx} \log x}{\frac{d}{dx} x^n} = \lim_{x \to \infty} \frac{\frac{1}{x}}{nx^{n-1}} = n \lim_{x \to \infty} \frac{1}{x^n}
\end{align}

さて、あとは x を無限大に飛ばしてやることで、以下を得ます。

\begin{align}
\lim_{x \to \infty} \frac{\log x}{x^n} = 0
\end{align}

これで、対数関数 < n次関数 ということが分かりました。

n次関数と指数関数

次はこの二つを比較してみましょう。

\begin{align}
\lim_{x \to \infty} \frac{x^n}{e^x}
\end{align}

同様に n自然数の定数で、指数関数の底は e とします。

ロピタルの定理を繰り返し適用することでも強さ比較は可能ですが、せっかくなので違う方法でやりましょう。

極限を求めたいもの全体を L とおきます。

\begin{align}
L = \frac{x^n}{e^x}
\end{align}

ここで、両辺対数をとってやります。\log L極限値を求めることにより、間接的に L極限値も得ることができます。

\begin{align}
\log L &= \log \frac{x^n}{e^x} \\
&= \log x^n - \log e^x
\end{align}

もう少し変形してあげれば、

\begin{align}
\log x^n - \log e^x = n \log x - x \log e = n \log x - x
\end{align}

かなり取り扱いやすい式になりました。
したがって、今求めたいものはこうです。

\begin{align}
\lim_{x \to \infty} \log L = n \lim_{x \to \infty} \left( \log x - \frac{1}{n} x \right)
\end{align}

(04/21追記: 式変形を間違えてたので直しました)

さっき対数関数と一次関数の大小比較をしました。対数関数 < 一次関数だったので、この極限は負の無限大に発散するはずです。

\begin{align}
\lim_{x \to \infty} \log L = - \infty
\end{align}

\log L極限値が求まったので、これを e に乗じてあげれば L の極限も分かって、

\begin{align}
\lim_{x \to \infty} L = \lim_{x \to \infty} \frac{x^n}{e^x} = e ^{- \infty} = 0
\end{align}

となります。(書き方があまりよろしくないですが)

というわけで、n次関数 < 指数関数 という結論を得ました。

先程のと合わせると、対数関数 < n次関数 < 指数関数ですね。

指数関数と階乗

最後に、この2つを比較します。

\begin{align}
\lim_{n \to \infty} \frac{e^n}{n!}
\end{align}

いろいろ面倒なので変数は整数にしておきます。大小比較する分には等価です。

n \to \infty とするので明らかに n \geq 3 ですので、このように上から評価できます。

\begin{align}
\frac{e^n}{n!} < \frac{e^n}{3^{n-2} \cdot 2 \cdot 1}
\end{align}

これをさらに変形します。

\begin{align}
\frac{e^n}{3^{n-2} \cdot 2 \cdot 1} &= \frac{e^{n-2}}{3^{n-2}} \cdot \frac{e^2}{2} \\
&= \left( \frac{e}{3} \right)^{n-2} \cdot \frac{e^2}{2}
\end{align}

ここで n \to \infty とすると、e/3 の絶対値は1より小さいため全体は0に収束します。

よって、最初の極限値も0に収束することが分かります。

\begin{align}
\lim_{n \to \infty} \frac{e^n}{n!} = 0
\end{align}

従って、指数関数 < 階乗でした。

 

まとめると、対数関数 < n次関数 < 指数関数 < 階乗となりました。

あと何か面白い比較対象などあれば教えていただきたいです。